カウス・テフィ：ウェールズの職人が作るチーズ

環境保護運動です。私はオランダで教師をしていて、環境教育に深く関わっていました。1970年代に、ジョン・シーモアの「完全版 自給自足の本」をオランダ語に翻訳したのですが、それがきっかけで私たちは友達になり、彼はペンブルックシャーの自宅に私を招待してくれました。それが私の最初のウェールズ訪問でした。

グリンヒノッド・ファームを購入してチーズ作りを本格的に始めたのは1984年です。その後、蒸留所も開設しました。私の息子は2人ともこの仕事に関わっており、ロバート=ジャンはファームと乳製品の管理を、ジョン=ジェームズは蒸留所のマネージャーをしています。家族総出でファーマーズ・マーケットに参加しています。

私たちのチーズは全て、カーマーゼンシャーのスランボイスにあるファノン・ヒャイス（Ffynnon Llaeth）の生乳を使用して製造しています。このミルクは英国土壌協会からオーガニックの認定を受けています。珍しいことですが、牧場経営者のサリーとギャリーは１日に１回だけ搾乳しています。これは、最後の一滴まで絞り出そうとすることで牛にストレスを与えないためです。その結果、彼らの牛は非常にのびのびと暮らしており、チーズ作りに最高品質の生乳を生産できるのです。

生乳で作るチーズは世界遺産に登録されています。ロックフォール、グリュイエール、エメンタール、パルメザンなど、世界で最も有名なチーズのいくつかは、生乳からしか作ることができません。ミルクを加熱して低温殺菌すると、含まれている糖分がカラメル化します。低温殺菌チーズの主たるフレーバーはキャラメルですが、そのトフィーフレーバーを模倣することはできません。生乳で作るチーズは、スタート、ミドル、フィニッシュの風味により深みがありますし、抗体や酵素がどれも破壊されていないため、健康面でもメリットがあるのです。

今は誰もが二酸化炭素排出量に関心を持っていますが、低温殺菌チーズの製造には、生乳チーズの製造の3倍のエネルギーが必要です。ミルクを低温殺菌するには先ず76℃まで加熱する必要があり、そして種菌を追加するために、今度はそれを20℃まで急速冷却しなければなりません。これには相当なエネルギーが必要です。種菌を加えたら、レシピに基づいた温度まで再び加熱する必要があります。

生乳の発酵を開始するには、牛の乳房の中のミルクの最高温度と同じ37℃に加熱しますが、それ以上の温度になることはないので、ミルクの栄養素は全てチーズの中に残ります。

季節ごとに幅広いバリエーションがあり、それが大きな違いを生みます。チーズは、春、夏、冬のどのミルクを使用するかによって異なってくるのです。色も変わります。牛が草の上にいるときはクリーミーでより黄色っぽくなります。優れたチーズ職人は一貫性のある製品を作るために、それらの違いを微調整することができます。

ケアフィリーのレシピに基づいていますが、次の工程は大きく異なります。ケアフィリーは棚に置かれて熟成しますが、ケルティック・プロミスはステンレス製のラックに置かれ、週に3回特定のバクテリアを吹き付けられながら、高い温度と湿度の中で熟成します。

ベスト・ウェールズ・チーズを8回も獲得することができたのは、チーム全体のスキルと献身の証です。また、ここケレディギオンで生産されたミルクの品質も反映してます。英国最優秀賞を受賞したチーズがここで生産されていることは、ウェールズのミルクとチーズ共に私たち全員が誇るべきものであることを証明しています。

1955年にスランゴスレン国際アイステズボッド（芸術祭）に来た時、パヴァロッティは19歳で、彼と彼の父親は、男声合唱団の大会で優勝した合唱団に所属していました。それが彼のキャリアのスタートとなり、彼はいつかスランゴスレンに戻ってくることを誓いました。彼は約束を守り、1995年にスランゴスレンに戻ってきたのです。

彼は偶然にも、ダイという伝説的なシェフがキッチンを切り盛りしていたブリン・ハウエル・ホテルに滞在していました。パヴァロッティはそこで、私たちのカウス・テフィ・シーウィードも乗っているチーズボードを注文したのです。そして、それは彼に衝撃を与えました。彼はそのチーズについての全てとそれがどこで作られたのかを知りたくて、ファームに急使まで送りました。彼は次の会場であるニューヨークに、約10kgものチーズを持っていきました。その後、彼は定期的にモデナの自宅宛てに注文していました。

ファーマーズ・マーケットやフード・フェスティバルでは、お客様に直接販売しています。チーズ専門店やデリカテッセン、オンラインで購入することもできます。ファーム・ショップもあり、乳製品や蒸留所を見学するツアーもあります。私たちはチーズを世界中に届けています。ローマにある英国大使館に送ったこともあるんですよ。オーガニックのウェールズのハルミ風チーズも売っています。

今、蒸留酒の中ではジンがとても流行っていますが、このチーズもそういう感じのものです。より多くの人々が菜食主義者になってきています。その結果、ハルミ・チーズの人気は沸騰しています。タンパク質が豊富で、少し弾力があって食感も他のものよりしっかりしています。私たちはファーマーズ・マーケットで試食品を出してみましたが、お客さんは皆とても気に入ってくれました。一部のハルミ風のチーズは水分が多いのですが、私たちのチーズはそうではありません。水っぽくないので、しっかり焼くことができます。沢山のシェフたちもそう言ってくれています。

カウス・テフィ・チーズを創業してから10年を記念して、1992年にスコットランドの西海岸にあるスプリングバンク蒸留所でオーガニックのウィスキーを製造しました。当時、他の全ての製品でオーガニックのものを購入することはできましたが、オーガニックのウィスキーだけは存在していませんでした。私はオーガニックのウィスキーでミレニアムの祝杯をあげたかったので、2000年に私たちのウィスキーの瓶詰めを始めました。新しい千年への期待にちなんで、私はそのウィスキーに英語で「2000」、ウェールズ語で言うと「dwy fil」を意味する、「Da Mile」というスコットランドのゲール語の名前を付けました。それが大成功だったので、私は2012年にファームに自分の蒸留所を設立しました。ウィスキーだけでなく、様々なオーガニックの蒸留酒を作り続けています。

小売用に瓶詰めしているオーガニックのシングルモルト・ウェルシュ・ウィスキーの3回目の仕込に取り組んでいるところです。また、最初のオーガニックのウェルシュ・ラムの製造にも取り組んでいます。2020年にセント・デイヴィッズ・デイを記念して、少量限定生産しましたが、これは大好評でした。そして現在、今後の主要製品となるであろうオーガニックのウェルシュ・ラムを、より大量に仕込んでいるところです。