ペンブルックシャーの海岸から1マイル(1.6キロメートル)も離れていない、フィッシュガードの町の近くにある森に囲まれた渓谷に、メリン・トレグウィントはあります。

白く塗られた石造りの建物と水車を備えたこの毛織物工場は、まるで歴史的観光地と間違えるかもしれませんが、ある意味その通りなのです。同時に、40人以上を雇用する繁盛している企業でもあり、その特徴的な織物のパターンは、アメリカや日本といった遠く離れた場所でも熱心なファンを獲得しています。

小川と白く塗られたメリン・トレグウィントの建物
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メリン・トレグウィントの近くのブルーベルの森
白く塗られたメリン・トレグウィントの建物とその近くのブルーベルの森

平日の午前中、この場所は活気に満ちており、工場のカフェの外では、休暇中の観光客たちが日差しを浴びながらコーヒーを飲んでいます。店内には、メリン・トレグウィントの布で作られたひざ掛けやクッション、その他様々な製品が山積みにされています。買い物客は毛布を光にかざし、その色合いを確認しながら、そっと撫でています。織物は感触が大切なのです。

この工場は、17世紀からこの場所にあります。かつて、ウェールズのほとんどの渓谷に毛織物工場があった時代から、今なお生き残っている数少ない企業の1つです。

前オーナーのエイヴィオン・グリフィス氏は、この事業が彼の祖父ヘンリー氏によって始められたと説明しています。彼は、1912年にオークションで760ポンドを支払ってこの不動産を購入しました。彼の事業戦略は非常にシンプルで、織物の原材料である羊毛は近隣の農場で生産され、製品は地元で販売されていました。

エイヴィオン氏はこう語ります。「全てが小さな地域内で行われていました。販売はしばしば、物々交換の形で行われていました。古い帳簿をめくると、ある農夫が新しいスーツをオートバイと交換した記録が見つかりました。」

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メリン・トレグウィント製品のクローズアップ画像
エイヴィオン・グリフィス氏、メリン・トレグウィントの現オーナーと製品のクローズアップ画像

彼の父のハワード氏が1950年代に経営を引き継ぎました。エイヴィオン氏は建築家になるための教養を受けましたが、1979年に、父親と一緒に働くためにペンブルックシャーに戻りました。彼はこう語ります。「父は素晴らしいビジネスマンでしたが、デザインやマーケティングにはあまり関心がありませんでした。」と彼は言います。「私はその両方に強いこだわりがあったので、私たちはうまく協力して仕事をしていました。」

本質的な部分は変わっていません。織物室の機械の音を聞きながら、エイヴィオン氏はメリン・トレグウィントの「ウェールズの織物」と言われる特徴的な二重織を生み出す方法を説明します。2つの層を織り合わせて、大胆な図柄の部分を持った、耐久性のある生地が作られます。この技法は18世紀から続いており、どんな生地にも簡単にデジタルデザインを転写できる現代の技術に対する対抗策ともいえるものです。

メリン・トレグウィントの機械
メリン・トレグウィントの機械のクローズアップ画像
woman operating machinery, Melin Tregwynt
機織り室にある機械と、その機械を操作するスタッフ

多くの人が、この伝統を見学するためにここを訪れます。平日には織物小屋で羊毛が布に変わる魔法のような工程が見られ、完成した製品は併設されたショップ(メリン・トレグウィントのウェブサイトと同様に)で購入できます。人々がよく写真を撮る棚には、さまざまな色の糸のコーンが積まれており、それぞれにラベルが付いています。そして、名前の多くは自然を連想させるもので、例えば「キャットキン(淡い緑色)」や「シュルー(控えめな茶色)」、「コーンフラワー(明るい青)」などがあります。

もう1つ撮影スポットとして人気なのは、工場に併設する魅力的なカフェです。ここでは、織物愛好家からお腹を空かせたハイキングをする人(工場はウェールズ・コースト・パスから少し迂回した場所にあります)まで、誰もが豪華なケーキやコーヒー、さらには伝統的なウェールズのサンデーランチを楽しんでいます。この場所では、夏のジャズ公演などの特別なイベントも開催されており、地元コミュニティの社交の場としても機能しています。

ザ・カンブリアン・チェック、アデルボーデンの「カンブリアン・ホテル」、スイス
ラベルの付いたメリン・トレグウィントのブランケット
ザ・カンブリアン・チェック、アデルボーデンの「カンブリアン・ホテル」、スイス

このビジネスは、地元での販売戦略に基づいて立ち上げられましたが、現在では「メリン・トレグウィント」の名前は世界中に広まり、最高品質の織物が日本、中国、ヨーロッパの店舗の棚を飾り、多くの高級ホテルでも使用されています。

また、同工場は『セレブリティ・ビッグ・ブラザー』や『アプレンティス』などのテレビ番組のために、特別な図柄のひざ掛けやブランケットの製作もしています。さらに、英国のスーパーマーケットチェーン、ウェイトローズとの提携で世界最大のピクニックブランケットを製作する依頼を受けたこともあります。

「私たちは間違いなく『どこにでもある』ビジネスではなく、『ここにしかない』ビジネスです。」

とエイヴィオン氏は言います。20世紀の苦難によってほとんどのウェールズの工場が姿を消しましたが、メリン・トレグウィントは繁栄する方法を見つけ出し、その製品の完璧な品質が世界に認められるようになりました。今後も長く製造を続けることを目指しています。

2022年に、同社は従業員所有企業へと移行し、前オーナーのエイヴィオン氏とアマンダ・グリフィス氏が経営の管理を組織の42人の従業員に引き継ぎました。従業員所有企業に移行するという決定は、雇用を守るだけでなく、工場が現在の歴史的な場所で運営を続けることを確保するために行われたものです。エイヴィオン氏は、この場所がメリン・トレグウィントの成功に、常に重要な役割を果たしてきたと感じています。

「私たちは間違いなく『どこにでもある』ビジネスではなく、『ここにしかない』ビジネスです。」と彼は言います。「私たちはこの地に根ざしており、それこそが私たちの際立った特徴なのです。」

 

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