ハイジンクス(Hijinx)は、すべての人が演劇にアクセスできることを目的に、小規模なツアー公演会社として1981年に設立されました。パフォーマンス、コラボレーション、そして創造性への情熱から生まれたこの会社は、ニューロダイバーシティ(脳の多様性、発達障害)を持つ俳優とニューロティピカル(定型発達、発達障害のない)の俳優がともに対等なパートナーとして革新に取り組むことのできる、安全で互いに励まし合える場を育んでいます。
プロフェッショナルな人もそうでない人も、同様の支援と称賛を受けています。最初のコミュニティ・グループ「オデッセイ(Odyssey)」は1999年に設立され、2008年にハイジンクスは、その旗艦となるウェールズで唯一の、そしてヨーロッパ最大規模の「ユニティ・フェスティバル(Unity Festival)」を立ち上げました。
ハイジンクスは、学習障害を持つ人や自閉症の人々にプロフェッショナルな演技トレーニングを提供する、ウェールズで唯一の組織です。2012年に最初のアカデミーを開設し、現在ではウェールズ各地(コルウィン・ベイ、カマーゼン、アベリストウィス、カーディフ)の5つの拠点で運営しています。最近の映画やテレビへの進出は、現在のアカデミーのカリキュラムにも反映されています。ハイジンクスは名前の通り、多くのことに挑戦しているのです。
本格的な演劇作り
ハイジンクスの作品は、決まった台本から始まるわけではありません。まずひとつの部屋に、創造性豊かな人々が集まります。学習障害や自閉症を持つアーティストが、定型発達のパフォーマーと共につねにその場で作業をしています。最初のアイデアを探求し、グループに分かれて検討、練り直されます。そこから、即興や実験を通じて構成と台本が生まれます。その後、リハーサルの録画・書き起こしを経て、編集され、最終的な台本が完成します。
「アイデア主導ではなく、グループ主導なのです」と芸術監督のベン・ペティット・ウェイド氏は説明します。「私たちは、すべてのプロセスにおいて、アーティスト自身が完全に作品の所有権を持つことを保証しています」。
最高経営責任者(CEO)のサラ・ホーナー氏にとって、ハイジンクス最大の成功は、人材への投資です。それには、彼らの仕事だけでなく、彼らの軌跡のすべてへの投資でもあります。「私たちはこの分野における先駆者です」と彼女は言います。「共同作業の喜びのひとつは、他の組織やアーティストたちに、異なる創作法を示すことです」。
「私たちのことを私たち抜きで決めないで」
「これは私たちにとって非常に重要なことなのです」とサラさんは言います。「私たちは他人の代弁をするのではなく、共に働くアーティストの声を増幅し、舞台やスクリーンで表現するものが真実であり、本物であることを確固たるものにしたいのです」。
「私たち制作会社にとっての課題は、共に仕事をするアーティストたちが、他の俳優たちと同等な機会を得ていないことです」とベンさんは付け加えます。「多くの人は演劇学校に通うことや、家を離れて暮らすことができません。私たちは非常に総合的なアプローチをとっています。私たちが作りたいものを作るためには、そのような機会を提供する必要があるのです」。
「私たちはつねに、自分たちがどこから来たのかを作品の中で強調したいと考えています」とベンさんは証言します。「それが作品自体で明確に表れていない場合でも、必ず取り入れるようにしています」。その一例が、ブラインド・サミット(Blind Summit)とのコラボレーションである『ミート・フレッド(Meet Fred)』です。この作品は、本物の男の子になりたい布製のパペットについての物語です。フランスでのツアーでは、俳優たちは「ありがとう、私たちはウェールズ(イングランドではありません)から来たハイジンクス・シアターです」と書かれた字幕の下でお辞儀をしました。
『ミート・フレッド』は、ハイジンクスの代表的な公演のひとつであり、130都市で250回以上上演され、25,000人を動員した世界的なヒット作です。成功の秘訣は、その真実性にあります。この物語は、世界中のさまざまな観客とつながる力を持っています。
「私たちはウェールズを、強いアイデンティティを持つ独自の場所として押し出していかなければなりません」とベンさんは言います。「『ミート・フレッド』のようなショーは、人々に私たちがどこにいるのか、誰なのかを認識させる手助けになります」。
大いなる野心
ハイジンクスは比較的小さな会社かもしれませんが、その野心は壮大です。「私たちは、人々が現実的な生活を営み、見守られながら安心して暮らせるようにしたいのです」とサラさんは強調します。
「包括的に取り組むには、他の組織には発生しないような追加のコストがかかりますし、膨大な時間と費用の投資を伴います。しかし、私たちは自分たちの取り組みが与える影響、共に働く人々やその家族、サポートネットワークにもたらす変化を実感しています。そして、それをさらに広めていく責任があると感じているのです」。
しかし、状況は良い方向に変わりつつあります。ロックダウン中のデジタルメディア消費の増加と、オンラインコンテンツの比較的手頃な価格とアクセスのしやすさが相まって、ハイブリッド/ブレンド型の演劇の人気がますます高まっており、ハイジンクスやそのパフォーマーたちにより多くの機会がもたらされているのです。
さらに、ハイジンクスは人々の自信や幸福感に大きな影響を与えています。身につけるスキルのおかげで、彼らは自立した生活を始めることができるのです。経済的な視点から見ると、ハイジンクスに投資された1ポンドごとに、約5ポンドの社会的リターンが生み出されています。
ユニティ・フェスティバル:すべてをひとつに
世界最大級の包括的な障害者芸術フェスティバルのひとつである「ユニティ・フェスティバル(Unity Festival)」ほど、こうした素晴らしいパフォーマーたちが最も輝ける場所はありません。映画、演劇、ダンス、ピエロ、ストリート・パフォーマンスなど多岐にわたる「ユニティ」は、俳優たちを世界中へと送り出してきました。
「このフェスティバルは、招待したアーティストたちにウェールズの持つ豊かさを体験してもらう上で、非常に重要な役割を果たしています」とサラさんは言います。「こんなにも活気があり、多彩で素晴らしいプログラムをウェールズで上演し、さまざまな公演の後に生まれた対話や相互訪問を目にすることは、本当に価値があることです」。
「それはまさに『ウェールズ的』な体験です。そして私たちは、この『ウェールズ的』なおもてなしを体験してもらうために、人々をウェールズに招いています」。
詳細情報: