2015年、ウェールズ議会(セネッド)は「未来世代のためのウェルビーイング法 」を可決し、現存の世代だけでなく、未来に生まれる人々も考慮した立法を行った世界初の国となりました。この法律は、公共部門に対して、ウェールズの人々がより良い生活を送り、持続可能な地球を次世代に引き継ぐための意思決定を行うことを求めています。 

この法律は、7つの幸福目標を中心に設計されており、ウェールズが共通の目的に向かって取り組んでいることを示しています。これらの目標は、ウェールズをより健康的で、繁栄し、レジリエンスがある平等な社会へと導き、地域社会の絆を深め、活気ある文化と豊かなウェールズ語を育みながら、さらに地球規模で責任ある行動を促進することを目指しています。 

そして10年の月日を経て、日本も同様に未来世代法を策定し、国会において「未来世代委員会」を設立するための立法を進めています。 

では、この法律はウェールズにどのような利益をもたらし、また日本にとってはどのような意味を持つのでしょうか? 

未来世代法は、ウェールズを未来の世代にとってより良い場所にすることを目的として制定された法律です。世界で初めて、この革新的な法律は未来世代のニーズをすべての意思決定の中心に据えています。気候変動や不平等、社会的幸福といったウェールズが抱える長期的な課題に取り組むことを目指し、持続可能な開発を意思決定のプロセスに組み込んでいます。 

この法律の施行以来、ウェールズでは人々の生活に実質的な変化をもたらすためのさまざまな取り組みが進められています。これには、2050年までに温室効果ガスの排出をネットゼロにするという取り組みや、グリーンジョブ、持続可能なインフラ、気候変動への対応、さらには不平等の解消に焦点を当てたグリーンディールが含まれています。 

その後に発表された政策は、この法律が掲げる気候変動への長期的なアプローチに強く影響を受けており、経済的な決定が十分に考慮した形で行われることが確保されています。 

何百万人もの人々を支援 

この法律の目的は、何世代にもわたって何百万人もの人々とその家族を支援することです。その中には、東京出身で2005年にスウォンジー大学で計算力学を学ぶためにウェールズに来て以来、科学者として働き続けている加藤潤氏のような日本国籍の人々も含まれています。 

彼は次のように述べています。 
「ウェールズがこの分野で先頭を切っているのは素晴らしいことです。子供の頃と比べて、周りの変化が驚くほど速く進んでいると感じます。だからこそ、あらゆる面で次世代を意識することが重要だと思います。」 

マイクで話す3人の人々
未来世代フォーラム

他国の模範となる存在 

日本では、ウェールズの「未来世代の幸福法」が2024年12月4日の東京エコプロ展示会で注目を集め、ウェールズの元環境大臣ジェーン・デイヴィッドソンがその立法内容やウェールズにとっての意味、そして他国がどのように学べるかを語りました。 

実際、この法律はすでに世界中に影響を与えており、国連総会は今年、ウェールズのモデルに触発された「未来世代の特使」を設立することを発表しました。日本も今、同じ道を歩み、未来の生活に向けた持続可能な社会の設計するという野心的な目を掲げて、同様の立法を模索しています。

日本経済新聞主催のこのイベントでは、持続可能な開発目標に焦点を当て、ウェールズが「未来世代法」を制定した経験と、その幸福目標が与えたポジティブな影響についてのプレゼンテーションが行われました。続いて、国連日本代表部、日本外務省、内閣府の高官によるパネルディスカッションが実施されました。 

共通のビジョン 

ウェールズの「未来世代の幸福法」は、小さな国がどのようにして世界が直面する最大の課題に挑んでいるかを示しています。 

ウェールズと日本は共通のビジョンを持ち、革新的な技術や環境問題への解決策、さらにコミュニティづくりにおいて協力する大きな可能性を秘めています。これらの取り組みは、未来の世代のために、より安全で公平、かつ持続可能な世界を築くことを目指しています。 

重要なことに優先順位をつけることで、私たちのコミュニティ、環境、そして共に築く未来を大切にし、持続可能な変化を実現することができます。 

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