聖デイヴィッド、またはウェールズ語でデウィ・サント(Dewi Sant)として知られる彼の生涯については、事実と伝説が入り混じっています。ウェールズの司教であり、彼の誕生は天使によって予言され、100歳を過ぎてから亡くなったと言われています。

確かなことは、6世紀の説教者であった彼が生涯にわたって多くの支持者を獲得し、最終的に60以上のウェールズの中世の教区教会が彼に捧げられたということです。この人気が、デイヴィッドがウェールズの守護聖人としてまつられる要因となり、彼の祝日である3月1日は、ウェールズにまつわる全てを祝う毎年恒例の祭典へと発展しました。

ここでは、ウェールズで最も有名な聖職者に関する重要な事実をご紹介します。

大勢の人々の頭上にウェールズの国旗を掲げる子供
A child flying the Welsh flag.
ウェールズの旗がはためいている

嵐の中で生まれた少年

伝説によると、西暦500年頃に生まれたとされるデウィの誕生は、その約30年前に天使によって予言されていました。彼がついに現れた時、激しい雷雨の中、海を見渡すウェールズ西部の崖の上での彼の誕生はまさに劇的であったとされています。彼の母親である修道女ノンにちなんで名付けられた礼拝堂の廃墟が、その場所の目印であると考えられています。また、嵐の際に湧き出たとされる礼拝堂の井戸は、その治癒力で有名になり、現在でも訪れることができます

彼の母親は修道女でしたが、父親であるサントはケレディギオンの王であり、デイヴィッドは王族の血統を誇っていたと伝えられています。

ペンブルックシャーのノンの礼拝堂にある聖堂
St Non's Chapel Ruins, Pembrokeshire
ペンブルックシャーにある聖ノンの礼拝堂の廃墟

旅立ち

デイヴィッドは教育を受けた後、巡礼の旅に出て名高い説教者となり、ウェールズ、フランス北部のブルターニュ、そしてイングランド南西部に、数々の修道院や教会を設立しました。その中には、グラストンベリー修道院も含まれていたと言われています。また、デイヴィッドはウェールズの他の2人の聖人、パダーン(Padarn)とテイロ(Teilo)と共にエルサレムを訪れたとされ、そこで総大司教として聖別されたとも伝えられています。

水飲みデイビッド

旅から戻ったデイヴィッドは、彼の名誉に由来して現在は「セント・デイヴィッズ(St Davids)」と呼ばれる、ペンブルックシャー南西部にある小さな都市に定住しました。そこで彼は、厳格な宗教的コミュニティを設立しました。彼と彼の僧たちは質素な生活を送っていました。彼らは、手で畑を耕し、デイビッドは水しか飲まず(ウェールズ語では「デウィ・ダブルウ(Dewi Ddyfrwr)」(水飲みデイビッド)として知られていました)、リーク(長ネギ)だけを食べていました。彼が修道院を設立したのはこの時期であり、その場所には現在、その歴史が1181年にまで遡る有名なセント・デイヴィッズ大聖堂が建っています。

草と墓石に囲まれた石造りの聖堂
ペンブルックシャーの魅惑的なセントデイヴィッド大聖堂

奇跡を起こす男

デイヴィッドは、十字を切ることで盲目の男性の視力を回復させたなど、生涯にわたり多くの奇跡を起こしたと言われています。

しかし、彼の最も有名な奇跡的な行いは、ランゼウィ・ブレヴィ村(Llanddewi Brefi)での説教中に起こりました。説教を聞きに集まった大勢の群衆に聞こえやすいよう、デイヴィッドは自ら立っていた丘を足元から隆起させたのです。その同じ説教の最中に、平和の象徴である鳩が彼の肩に降り立ちました。デイヴィッドはこの鳩とよく関連づけられ、描かれています。

永遠の遺産

89年にデイヴィッドが亡くなった後も、彼の名声はウェールズ内外で広がり続けました。その後、数多くの中世の教区教会が彼に捧げられ、彼が築いた修道院にある彼の聖堂は、人気のある巡礼地となりました。教皇カリストゥス2世は、セント・デイヴィッズ大聖堂への2回の巡礼は、ローマへの1回の訪問に相当すると布告しました。

デイヴィッドはまた、彼の死の直前に行った最後の説教で、群衆に次のような言葉も残しています。彼は、「喜びなさい。信仰を守りなさい。そして、私がしてきた小さなことを行いなさい。」と言いました。この「グネウフ・ア・ペサイ・バッハイン・メウン・ボウィド(Gwnewch y pethau bychain mewn bywyd:人生で小さなことを行いなさい)」という言葉は、今でもウェールズでよく使われる言い回しです。

海でサーフィンをする人
砂浜に座って海を眺める人々のグループ
今日のセント・デイヴィッズには、信仰深い観光客だけでなく、サーファー、ハイカー、ビーチ愛好家も集まります。

毎年恒例の祝祭

セント・デイヴィッズ・デー(聖デイヴィッドの日)は、デイヴィッドの命日である3月1日に、ウェールズ全土で、さらには東京からニューヨークまで、世界各地のウェールズの移住者コミュニティによって、毎年お祝いされています。かつては守護聖人のための宗教的な祝日だったこの日は、今ではウェールズの全てを祝う華やかなイベントへと変わりました。地元の人々は、ウェールズの象徴の1つでもある水仙のブローチや帽子を身につけ、特別なイベントやコンサート、ストリート・パレードに繰り出します。

他の慣習としては、学校の子供たちがウェールズの伝統的な衣装を着たり、ウェールズの美しいビーチ寒中水泳に挑む勇敢な泳者の姿が見られます。また、英国陸軍の連隊「ロイヤル・ウェルシュ」の隊員たちは、毎年この日をリークの早食い競争で祝います。デイヴィッドの食生活を考えれば、彼もこの活動を大いに支持したことでしょう。

ウェールズでのセント・デイヴィッズ・デーの祝い方について、もっと詳しく学びましょう。

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