カーディフ湾に向かうと、ウェールズで最も印象的な現代建築が二つ並んでいるのを目にすることでしょう。ウェールズ議会があるセネッズ(Senedd)と、この国の芸術の拠点であるウェールズ・ミレニアム・センターです。これこそが、舞台芸術がウェールズの生活の中心にあることを非常によく表しています。 the performing arts are at the very heart of Welsh life.
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光輝く銅とスレートで覆われ、ウェールズ語と英語の詩が刻まれたウェールズ・ミレニアム・センターでは、大ヒットミュージカルのツアー公演やハイキック・ダンスの派手なショーから、劇場のロビーで催されるランチタイムの無料リサイタルまで、さまざまなイベントが開催されています。また、ウェールズ国立ダンス・カンパニー(National Dance Company Wales)、リテラチャー・ウェールズ(Literature Wales)、BBCウェールズ国立管弦楽団(BBC National Orchestra of Wales)、そしてニューヨーク・タイムズ紙で、ヨーロッパ最高のオペラ団のひとつと評されたウェールズ国立オペラを含む、幅広い芸術団体の常設拠点となっています。
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幕開け
ウェールズ・ミレニアム・センターの洞窟のようなドナルド・ゴードン劇場や、美しい花のパネルで彩られたスウォンジーのブラングウィン・ホール(Brangwyn Hall — 元々は貴族院のために依頼されたが、色が鮮やかすぎるという理由で却下された)に足を踏み入れる時の臨場感に勝るものはありません。しかし、ウェールズのアートシーンは、より身近な会場での小規模なパフォーマンスにも同様に力を入れています。

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モルドにあるシアター・クロイド(Theatr Clwyd)は、北ウェールズにおける芸術の中心地で、高い評価を得ている演劇や、毎年32,000人以上が鑑賞する陽気なパントマイムを自主製作しています。北ウェールズの海岸に位置するランディドゥノにあるヴェニュー・カムリ(Venue Cymru)では、オペラからボーイズ・バンドまで、あらゆる種類のライブエンターテイメントが開催されます。そして、カーディフのシャーマン・シアター(Sherman Theatre)は、リスクを厭わない実験的な作品で知られています。この劇場はウェールズでは初となる、「ザ・ステージ・アワード」のUKリージョナル・シアター・オブ・ザ・イヤーの称号を獲得しました。
また、英語劇を製作するナショナル・シアター・ウェールズ(National Theatre Wales)と対等な存在の、ウェールズ語劇を上演するシアター・ゲネドラエソル・カムリ(Theatr Genedlaethol Cymru)もあります。彼らの使命は、従来の劇場の枠を超えて、農場や航空機の格納庫、ナイトクラブ、村の集会所などでも公演を行うことです。夏には、美しい城でのイベントも含め、野外劇や映画上映で長い夜を満喫させてくれます。
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フェスティバルの季節
ウェールズ語文化を祝い、競技を行うエイステズヴォッドは、ウェールズ特有の伝統的なイベントです。最大規模のものはナショナル・エイステズヴォッド(National Eisteddfod)で、ウェールズの北半分または南半分で毎年交互に開催されます。これはヨーロッパ最大の音楽と詩のフェスティバルで、その起源は1176年にまで遡ります。6,000人以上の競技者が参加し、パフォーマンスの水準は極めて高いものです。
「一年を通して、ウェールズは音楽フェスティバルのビートに包まれています」
ウェールズ各地では、25歳以下を対象としたジュニア版の「イルズ・ナショナル・エイステズヴォッド(Urdd National Eisteddfod)」も開催されています。それに対して、スランゴスレンで開催されているインターナショナル・ミュージカル・エイステズヴォッド(International Musical Eisteddfod)では、50カ国以上から出演者を迎えています。ルチアーノ・パヴァロッティ、デイム・キリ・テ・カナワ、サー・ブリン・タルヴェルなどがそのステージを飾ってきました。
一年を通して、ウェールズは音楽フェスティバルのビートに包まれています。「グリーン・マン(Green Man)」は、ウェールズにおけるフェスティバルの真骨頂で、ウェールズ中部のバナイ・ブラヘイニオグ(ブレコン・ビーコンズ国立公園)のドラマティックな風景を背景に、音楽、コメディ、詩、仲間たちとの楽しい時間を組み合わせた家族向けのイベントです。クラシック音楽ファンには、ウェールズ中部の美しい木造邸宅グレガノグ・ホール(Gregynog Hall)で開催される「グレガノグ・ミュージック・フェスティバル(Gŵyl Gregynog)」がお薦めです。このイベントは1933年に初めて開催されました。


北ウェールズ、アングルシー島のホーリーヘッド近郊にある普段は静かな湖が「ゴットウッド(Gottwood)」のユニークな会場となっており、インディペンデント紙で「英国で最も美しいフェスティバル会場のひとつ」と評されたこの場所に、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのビートが響きます。毎年10月に開催される「スーン・フェスティバル(Sŵn Festival)」では、カーディフ全域で4日間にわたるライブギグが開催され、長い夜に光と音をもたらします。そして、もちろん、国際的なビッグアーティストから新進気鋭のアーティストまで、彼らのライブ音楽を楽しむのにフェスティバルの開催を待つ必要はありません。あなたの好きな音楽がジャズ、フォーク、インディーロック、室内楽のいずれであっても、ウェールズではつねに活気ある音楽シーンを垣間見ることができるのです。
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言葉と躍動
物語はウェールズの生活に深く織り込まれています。「ヘイ・フェスティバル(The Hay Festival)」は、ビル・クリントンの言葉を借りれば「精神のウッドストック」であり、現在ではヨーロッパ最大の文学の祭典として確立されています。本の町として有名なマーケットタウンのヘイ・オン・ワイで開催され、この「文学の国」では、世界の著名な作家や思想家がキャッスル・ストリートを闊歩し、深い議論を交わす光景を見ることができます。
ウェールズ全土では、より小規模で身近なイベントが多数開催されています。南ウェールズのセント・ドナッツ城の敷地で二年に一度開催される「ビヨンド・ザ・ボーダー(Beyond the Border)」は、世界のあらゆる文化圏の民話を保存し、継承することを目的としています。それとは対照的に、「マーサー・ライジング(Merthyr Rising)」は、赤旗が初めて反乱の象徴として掲げられた町の、労働者階級の文化に強い敬意を表しています。

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もちろんスポーツもあります。ラグビーは、国民にとって特別な存在です。プリンシパリティ・スタジアムでは、ラグビーの試合だけでなく、ロックコンサートやモンスタートラックのラリーも開催されますが、その騒音も、ウェールズのラグビー・チームがシックス・ネイションズの試合でフィールドに登場する際の歓声には、とうてい及ばないとほとんどの人が言うでしょう。また、ウェールズは4回のラグビー・ワールドカップで21の試合を主催した実績があります。
代表チームの成功、ウェールズ代表とレアル・マドリードのスターであるガレス・ベイル選手の世界的な名声、そしてプレミアリーグに所属するチーム(つねに同じチームとは限りませんが)によって、長年にわたるサッカー人気が最近さらに高まりをみせています。2017年にカーディフで行われた、UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦ほど大規模で華やかな試合は他にないでしょう。
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それでも物足りない方には、ウェールズには約16,000人の観客を収容できる国際テスト・クリケット競技場、サファイア・ガーデンズ・カーディフ(南ウェールズ)などもあります。2010年には、ゴルフのライダー・カップがケルティック・マナー・リゾート(Celtic Manor Resort)で開催されました。そして、言うまでもなく、ウェールズ・ラリーGB、スピードウェイ・グランプリ、プリンシパリティ・スタジアムでのボクシングなど、年間を通じて多彩なスポーツイベントが行われています。
どんなイベントであっても、ウェールズの観客はエネルギーに満ち溢れており、惜しみない拍手を送ります。