2022 年、サッカーのワールドカップで初めてウェールズ国歌が演奏され、世界中がその歌を楽しむことになりました。しかしこの曲はどこから来たのでしょうか、そして歌詞はどういう意味なんでしょうか?

ヘン・ウラッド・ヴー・ナーダイ(我が父祖の土地)」手話バージョン

偉大な国歌 -そしてその起源の物語

後に国歌として採用される歌詞と音楽は、1856 年 1 月にポンティプリッド出身の父子によって作曲されました。 この曲の起源は今でも不確かですが、父親のエヴァン・ジェームスが作詞し、息子のジェームス・ジェームスがメロディを作曲しました。

ジェームス・ジェームスは、ポンティプリッドの宿屋でハープ(今日では、ウェールズの国民楽器として知られています)を演奏して生計を立てていた音楽家でした。 「ヘン・ウラッド・ヴー・ナーダイ(我が父祖の土地)」の最古のコピーは、ジェームズ自身が収集したさまざまな楽器や合唱音楽を含む写本の中に見出されます。 この資料は 1849 年から1863 年に編集され、当時ポンティプリッド地域で人気があった音楽の種類について理解する機会を与えます。

若きジェームスは、故郷の宿屋でよく演奏していたハープ奏者で、ロンダ川の岸辺を歩きながらこの曲を作曲したと言われています。 家に帰ると、彼は父親にその曲に合わせて歌詞を書いてほしいと頼みました。

翌朝までに、エヴァンは、メロディにぴったり合った3つの歌詞を思いつきました。感情のこもった歌詞は、最近アメリカへ移住し、エヴァンにウェールズを離れて、一緒に来てほしいと熱望していた兄への返答であったとする説があります

アニサンハラッド公園にあるエヴァン・ジェームズとジェームズ・ジェームズの記念碑
アニサンハラッド公園にあるエヴァン・ジェームズとジェームズ・ジェームズの記念碑

歌詞と曲が書かれたわずか1週間後、「グラン・ロンダ(ロンダのほとり)」と題された歌が、初めて世間に発表されました。その演奏の名誉は、マエステグのテイ

気持ちを高揚させる楽曲の名声は、すぐに広まりました。ベストセラーのウェールズ歌曲集として出版され、アイステッドフォッドとその他の愛国的な行事で人気曲となりました。「ヘン・ウラッド・ヴー・ナーダイ(我が父祖の土地)」は、徐々にウェールズの国歌として受け入れられるようになりましたが、今日に至っても国歌としての正式な地位は持っていません。

ジェームズ・ジェームズの曲は、ケルト圏の他の地域でもすぐに気に入られました。彼のメロディは、コーンウォール賛歌「我らの父の祖国」(Bro Goth agan Tasow)やブルターニュの国歌「我が父祖の地」(Bro Gozh ma Zadou)も使われています。

ウェールズ国歌と同じメロディ、同じ歌詞で歌われたブルターニュの国歌「我が父祖の地」(Bro Gozh ma Zadou)

ウェールズ国歌は、今やウェールズのスポーツイベント、特にラグビーやサッカーの国際試合と同義です。ウェールズとニュージーランドのラグビーユニオンチームがカーディフ・アームズ・パークで初めて激突しようとしていた、1905年に遡る伝統です。

オールブラックスが恐ろしい出陣の踊り「ハカ」を終えた後、ウェールズの観客が元気よく歌を歌ってやり返しました。それは、国際的なスポーツ試合の前に、国歌が歌われたのを初めて録画した事例です。そしてそのときは、功を奏しました。ウェールズが3-0で勝利したのです。

国歌の2行目には、「beirdd a chantorion, enwogion o fri」:詩人、歌手、有名人への賛辞が含まれています。現代を代表する、ウェールズの詩人・歌手・有名人たちは、彼らの国歌をどのように考えているのでしょうか。

ここでは、現代ウェールズを代表する詩人・歌手・有名人たちが、国歌についてどう考えているかを紹介します。

試合のためにピッチに向かって歩く2つのラグビーチーム
ウェールズ対南アフリカ戦の前にピッチへ駆け出すウェールズのラグビーチーム -2017年アンダー・アーマー・シリーズ 2017

「ヘン・ウラッド・ヴー・ナーダイ(我が父祖の土地)」―これは偉大な国歌です。 しかし、私たちの言葉を鵜呑みにしてはいけません。 私たちは芸術界やスポーツ界の友人たちに、彼らにとって国歌が何を意味するのかを聞いてみました。

イヴォル・アプ・グリンは、ウェールズの国民的な詩人であり、ナショナル・アイステズヴォッドで自由詩のクラウンを2回受賞しています。

「国歌は 160 年以上前に作詞されましたが、当時でさえその言葉は、ウェールズ語を毎日話していた人々にとっても少し古風に思えたでしょう。しかし、それが当時の作家に求められたスタイルであり、そのようにして自分達の作品に詩的な厳粛さを与えようとしました。 そして着心地がいいジャケットのように、私たちはそれらの言葉に確かに慣れてきて、歌詞は適切な場所で音楽を包み込んでくれます。」

ウェールズ国歌を斉唱するキジー・クロフォード

「結局のところ、それを届けるのは音楽、威厳のある歌い出しから最後の心を奮い立たせる音までの構成なのです。『Gwlad!Gwlad!』から『O, bydded i'r hen iaith barhau!』までの最後の3行は、必ず私の背筋が真っすぐ伸びて首がチクチク痛むような、祝賀と祈祷を組み合わせます。」

ティム・リス=エヴァンス(合唱団オンリー・メン・アラウドの創設者、合唱団オンリー・ボーイズ・アラウド、オンリー・キッズ・アラウド、オンリー・ボーイズ・アラウド・アカデミーを擁するアラウド・チャリティーの創設者兼芸術監督)

「ウェールズ国歌は、出だしから最も感情を揺さぶる歌の1つです。最初のフレーズはだんだんと1オクターブ上がっていき、このけたたましいオープニングが歌のムードを決めています。二重合唱は、「Gwlad」という言葉でのばす音のため、特に感情をかき立てます。合唱の繰り返しでは、多くの人々が最後のフレーズ「...i'r hen iaith barhau」を1オクターブ高く歌い、スタジアム全体が実際にその最高音を満たしていくのを聴くと、とても興奮します。」

「私は音楽家ですが、私を最も感動させるのは歌詞です。最初に言及されるのが、戦士や兵士ではなく、詩人や歌手であるというのは、素晴らしいことです。このように強く文化を優先する国歌は、国としての私たちをよく表しています。私たちの詩と音楽は、私たちが国として実力以上のものに挑むことができる大きな要因であり私たちの国歌は、歌の国としての私たちの矜持を示すものです。」

「私たちの詩と音楽は、私たちが国として実力以上のものに挑むことができる大きな要因であり、私たちの国歌は、歌の国としての私たちの矜持を示すものです。」

オンリー・メン・アラウドが「ヘン・ウラッド・ヴー・ナーダイ」(我が父祖の土地)を歌う

キャリル・トーマスは、ウェールズ女子ラグビーユニオンチームのルースヘッドプロップです。

「初めて私が「ヘン・ウラッド・ヴー・ナーダイ」(我が父祖の土地)を聞いたのは、小学校で歌ったときです。私はいつも熱烈な愛国者で、国歌はそれと結びつきました。」

今では国歌斉唱することは、国を代表してプレーする最高なことの一つになっています。チームメートとそこに立ち、観客と家族の前で歌うことができるのは、とても光栄なことです。アドレナリンも出てきます。国歌を歌わなければ、試合へのモチベーションが下がります。」

イングランド女子 対 ウェールズ女子-ナットウェスト 6 ネーションズ-ウェールズのキャリル・トーマスがイングランドのエイミー・コケインと対戦
ウェールズの20歳以下の女子ラグビー選手
ウェールズ代表でプレーし、ウェールズU20女子ラグビーチームと並んでいるキャリル・トーマス

「大声で歌っているときは、私の音程が合っていようが外れていようが関係ありません。『Gwlad, Gwlad pleidiol wyf i'm gwlad』の部分にくると、国のために立ち上がっているように感じます。それは素晴らしい気分で、非常に誇りに思います。」

ウェールズ国歌-歌詞を知りましょう

Mae hen wlad fy nhadau yn annwyl i mi,
Gwlad beirdd a chantorion, enwogion o fri;
Ei gwrol ryfelwyr, gwladgarwyr tra mâd,
Tros ryddid gollasant eu gwaed.


合唱:


Gwlad, Gwlad, pleidiol wyf i'm gwlad,
Tra môr yn fur i'r bur hoff bau,
O bydded i'r heniaith barhau.


Hen Gymru fynyddig, paradwys y bardd;
Pob dyffryn, pob clogwyn, i'm golwg sydd hardd
Trwy deimlad gwladgarol, mor swynol yw si
Ei nentydd, afonydd, i fi.


合唱


Os treisiodd y gelyn fy ngwlad dan ei droed,
Mae hen iaith y Cymry mor fyw ag erioed,
Ni luddiwyd yr awen gan erchyll law brad,
Na thelyn berseiniol fy ngwlad.


合唱

ウェールズ国歌、歌詞の英語訳

題名は、「我が父祖の土地」という意味

歌詞:

我が父祖の地は我に親しく

吟遊詩人と歌うたいと誉れ高き者らの地

勇敢な戦士ら、輝かしき愛国者らは

自由のために血を流す

合唱:

御国よ!御国よ!我は国に忠実なり!

海に守られし、清く親愛なるこの土地で

いにしえの言葉が永らえんことを

いにしえの山の国、吟遊詩人の楽園よ

いずれの谷、いずれの崖、我には美しく見えん

祖国の愛を通じて、川の流れる音も小川のせせらぎも

我には心地よく聞こえん

合唱

たとえ敵が我が土地をその膝下に置いたとしても

ウェールズのいにしえの言葉は永久に生き続け

精霊は恐るべき反逆の手で妨げられることはなく

祖国の琴の音が止むこともなし

合唱

ウェールズ国歌、手話バージョン

ウェールズ国歌、手話バージョン

関連情報

海の景色とイヴォル・アプ・グリン

国家の中心

元国民詩人イヴォル・アプ・グリンが、言語がどのようにウェールズの日常生活の中心であるかを説明します。