ウェールズは天然資源が豊富です。国の5分の1を占める3つの国立公園、5つの「特別自然美観地区」、約900マイルにもわたるのどかな海岸線、無数の川、起伏に富んだ丘、緑豊かな谷、密集した森林、そして雄大な山々など、保存すべきものがたくさんあります。
この土地は、歴史を通じて常にウェールズの支えとなり、重要な存在でした。現在は、全国の女性たちがその土地と、それを取りまく生態系を守っています。
木を植えることから夜空を守ることまで、女性たちはかつて「男性の仕事」と考えられていた役割を引き受け、汗を流して働いています。国の最も注目すべき場所のいくつかに拠点を置く彼女たちの仕事は、環境とウェールズの貴重な土地を守ることを日々の仕事の中での最重要事項と位置づけています。これらの場所が、ウェールズの人々とそこを訪れる人々に利益をもたらすようにすることが彼女たちの仕事なのです。
エラリ(Eryri‐スノードニア)の暗い夜空(ダークスカイ)
世界にはたった18か所のダークスカイ・リザーブしかありませんが、ウェールズにはそのうちの2か所があります - バンナイ・ブラヘイニョグ(Bannau Brycheiniog‐ブレコン・ビーコンズ国立公園)とエラリ(Eryri‐スノードニア国立公園)です。ウェールズの3分の2以上が最も暗い空の地域とされており、これはウェールズの保有する保護されたダークスカイの割合が世界で最も高いことを意味します。
世界の80パーセント以上の人口が光害の下で生活しており、彼らが夜空を見上げてもほとんど星は見えません。ウェールズの田舎は光害の悪影響を免れており、最近では、個人や団体でもウェールズのダークスカイを保護することに取り組み、星空観察に最適な目的地としてのウェールズの地位を守っています。
ダニエル・ロバートソンさんは、スノードニア国立公園(ウェールズ語でパーク・ケネドレイソル・エラリ‐Parc Cenedlaethol Eryri)のダークスカイ担当官です。彼女は、ウェールズの貴重なダークスカイを人々に紹介するほか、この地域の光害を減らすための対策がきちんと行われているかを確認しています。ダークスカイシーズンは9月に始まり、4月頃まで続くため、冬の間ダニエルさんは夜遅くまで過ごすことが多くなります。夏の数ヶ月間は、国立公園内の野生生物の活動を監視し、記録します。
「仕事の一部は、人々に使用が推奨される照明の種類を教えることです。照明をダークスカイに優しいものに変更することで、野生動物だけでなく、私たちの健康や精神的にも良い影響を与えることができます。」とダニエルさんは説明します。
「光害に長時間さらされることは、健康に非常に悪い影響を及ぼす可能性があり、 実際にかなり深刻な問題です。だからこそ、人々が暗闇を体験し、人工の光から心を休めることが非常に重要です。それは野生動物にとっても同じです。宇宙を見上げることで、私たちがどこから来たのかほんの少し洞察することができ、それが私たちを自然に戻してくれるのだと思います。それは、もはや多くの人々が体験できない、私たちの広い故郷を振り返るようなものです。星が見えない場所で生まれ育った多くの人々は、自分が何を見逃しているのかを知らないのです。」
ウェールズの神話や伝説の多くは夜空から生まれたもので、星座がウェールズという国を作る手助けをしてきたと言っても過言ではありません。
「多くの神話は農業暦に関連しており、それは人々が年間の記録を保持し、季節ごとにその土地で何をすべきかを知るための方法だったのでしょう。」とダニエルさんは言います。
「また、海洋国として海を航行するために、天測航法が使用されていました。これがなければ、私たちは世界を旅して、スレートを世界中に販売することはできなかったでしょう。」
野生動物とウォータースポーツ
ウェールズ南西部の端にあるスリス・ア・ブロン貯水池は、州内のほぼ半数の住宅や企業に水を供給しています。人里離れた湖は、見た目以上のものが隠れています。ペンブロークシャーのウェルシュ・ウォーター(Welsh Water)が運営するこの場所は、農地、森林、湖畔の生息地が混ざり合っているため、野生動物と自然の楽園となっています。ここには、アナグマ、キツネ、カワウソ、ヨーロッパケナガイタチ、オコジョ、リス、ウサギ、そして豊富な種類のコウモリ、小型哺乳類、昆虫が生息しています。また、この場所は観光名所でもあり、ウォーキング、サイクリング、釣り、ウォータースポーツなどの様々なアクティビティに参加する機会を人々に提供しています。
ミリー・ウィルソンさんは、リス・ア・ブロンを訪問者にとって魅力的な場所に保ちつつ、野生動物を守るという二つの側面をバランスよくこなしているレンジャー(自然保護官)です。木を植えたり、サイクリングをする人が湖の半ばで立ち往生した際には自転車を修理したりするなど、レンジャーとしての仕事は日々異なります。
田園管理と環境保全を学んだミリーさんが、この仕事の中で最も好きなのは、萌芽更新作業や植樹、垣根作りなど、森林を管理することです。
「お金のために保護活動をしている人はいないでしょう。野外活動が好きな人であれば、ある程度のレベルに達すると、そこからはあまり手を広げることはありません。常に楽しみながら、そして変化を生み出したいと思いながら活動しているのです。」
ウェールズ全土では、ウォーター・アドベンチャーが増えています。これら、心身ともに健康で幸福になる、レクリエーションの拠点は、訪問者をアウトドア、水、自然環境とつなげることを目的としています。そして、それぞれの場所の生態学的価値を維持し、保護し、向上させることを目指しています。
離島での生活:イニス・エンリ(Ynys Enlli‐バードジー島)
マリ・ヒューズさんと彼女のパートナーであるエミル・オーウェンさんは、2019年からウェールズ北西部の海岸から離れた小さな島で生活し、働いています。雨の日も晴れの日も外で働く自由が、ウェールズ語でイニス・エンリ(バードジー島)と呼ばれるこの島での生活にマリさんを引きつけました。二人はこの島で管理者として働いています。島は本土から1.9マイル(3キロメートル)離れており、都会の9時から5時の仕事の喧騒とは確実に違いますが、島を守る仕事には終わりのない任務が伴います。
島の需要は季節によって変わりますが、マリさんとエミルさんの主な仕事は、建物、庭、公共の歩道の管理です。冬が春に移り、島が活気に満ちてくるとすぐに、ホリデーシーズンのために観光客が到着し始めます。島には12軒の物件があり、すべてが第二級指定建築物に指定された建物で、そのうち9軒は訪問者に貸し出されています。(イニス・エンリのホリデー賃貸について詳しくはこちらをご覧ください)
日々の仕事に加えて、夏に誕生日プレゼントで3羽のニワトリをもらって以来、マリさんはベルタ、ブラン、マギの世話をするという新たな責任を担っています。
「春の間にすべての仕事をこなすことが一番の挑戦です。」とマリさんは説明します。
「4月になると島は爆発的に活気づき、すべての庭や歩道、そしてリンゴ園も同時に人でいっぱいになります。ちょうどホリデーシーズンの準備で最も忙しかった時期の直後です。」
「でも、それは素晴らしい時期でもあります。島が本当に活気を帯びてくるのです。」
この島は、キリスト教の初期の頃から巡礼の地として知られていますが、エンリにはそれ以前の時代の定住の痕跡も見られます。現在では、マリさんとエミルさんがこの島の唯一の住民ですが、数百頭の羊、牛がいる農場、そしてエンリ蜂蜜を生産するいくつかの養蜂箱があり、卵を産む新たな居住仲間もいます。
「やらなければならない仕事の多くは、毎週、毎年繰り返されるものです。しかし、私が最も楽しんでいるのは、木を植えたり、門を設置したりといった長期的な仕事を終える日です。」
「9時から5時までのオフィスでの仕事は私には合いませんでした。忙しい生活で、仕事に終わりはありませんが、エンリのように特別な場所を守り、改善するために自分のエネルギーを注ぐことができるのは光栄です。」
ウェールズを綺麗に保つこと
1970年代以降、慈善団体「キープ・ウェールズ・タイディ(Keep Wales Tidy)」は、現在と未来の環境を守るために、ウェールズ全域の地域社会と協力することに取り組んできました。私たちの健康や精神的な幸せを含めた生活の質は、私たちの置かれている環境の質と直結しており、言うまでもなく、野生生物や自然も同様に、保護された環境でこそ繁栄します。
ウェールズの首都カーディフ出身のレゲエアーティストでラジオパーソナリティでもあるアリーシャ・スコットさんは、最近、「キープ・ウェールズ・タイディ」の初の青年大使に任命されました。彼女はその役割を通じて、若者たちにチャリティー活動に参加し、変化をもたらすために最大限の貢献をするにはどうしたらいいか、自分たちの意見を発信するよう促しています。
「私はもちろんウェールズのことを大切に思っており、その役割における保護と保全の側面は私にとって非常に重要です。しかし、同様に重要なのは若者たちと協力し、彼らの声に耳を傾け、その声は重要であること、必要とされていること、そして変化をもたらす力があることを信じさせることです。」とアリーシャさんは言います。
「私の役割を通じて、他の慈善団体や組織と協力し、美しいウェールズを守る重要性を伝えたり、若者たちが自分の地域でどのように行動を起こせるかを理解させる手助けをしています。イベントでの講演に招待され、それぞれの地域を守るための対策をするあらゆる職業の、全国各地の多くの若者たちに出会えることを、光栄に思っています。」
「刺激のある若者たちに出会うことに、とてもやりがいを感じます。彼らがアイデアを共有し変化を生み出し、貢献できたことを実感したときに、彼らに自信が付くのを見るのは、とても特別なことです。」
キープ・ウェールズ・タイディの活動は、生垣の保護や密集した森林の植樹、新しい庭園の造成といった保全プロジェクトから、生物多様性の向上や地方自治体との協力によるゴミや廃棄物の管理まで多岐にわたります。また、慈善団体の活動の一環として、学校と連携して生徒に環境の重要性を教育したり、緑地や海岸、マリーナ、人気の観光地などに対する品質基準を確立することも含まれています。
若者たちの参加を促進するというアリーシャさんの役割は非常に重要です。「これらの若者たちは次世代の担い手であり、将来のウェールズを守り、保護する必要があるのは彼らなのです。彼らの意見は絶対に必要であり、それがなければどうなってしまうのかを考えると恐ろしくなります。」